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私は昔の田舎で育ったためか、子どもは「結婚した夫婦から生まれるもの」と思っておりました。

しかし、今日の日本を見ると、様相は大きく変化してことを認めざるをえません。

かつて、米国あたりのニュースで、結婚前の妊娠は珍しくない、結婚しないで出産した、などと聞くと驚いていましたが、今や日本でもまったく珍しくない出来事です。

私自身の中でも、現在では結婚と出産に関するイメージが大きく変ってきているのです。既婚でも未婚でも、妊娠された女性に「おめでとうございます」と素直に言えるようになっています。

私が1972年に、名古屋放送海外派遣学生の選抜試験に合格して初めて渡米したときは、まだ米国でも未婚のまま妊娠する人は少なかったと記憶しているのですが、1978年に72年当時のホストファミリーだった家庭に再度、泊めていただいた時には、同家の長女が結婚前なのに妊娠していたので驚きました。

その子が、「来年結婚するの。今、妊娠6か月よ」とあっけらかんと言うので、私はどう答えてよいか戸惑いました。「こ、こ、こんぐらチュレイション」と言うのがやっとでした。内心は、「何と困ったことに。両親の心中、お察し申し上げます。なんと言ってよいのだろう」という感じでした。

今の日本では、できちゃった結婚、おめでた婚、という言葉もすっかり一般化していますから、昔の私のような気遣いをする必要はありません。日本の少子高齢化問題が深刻ですので、未婚の母になってくれる人にも、「おめでとう。日本のために頑張ってくれて、ありがとうございます」と素直に言えるようになっています。

こんな状況を見てか、日経新聞も「多様な結婚の後押しで子供増やしやすく」と題する社説の中で、「結婚といえば法律婚を指すのが一般的だ。だが日本人の寿命が延び、世代を問わず人生設計への考え方が多様になっており、届けを出さない同居男女が増えてきた。伝統的な家族のあり方を否定はしないが、ライフサイクルの標準形が成立しにくい時代だ。この機をとらえて結婚のかたちの多様化を後押しし、自然に子供を増やせる環境をはぐくみたい」と述べています。まことにその通り、と同意いたします。「そんな、ふしだらな」という言葉も死語に近いでしょう。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

6月10日20時00分 614
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