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東京オリンピックの開催日も近づき、国中が外国人訪問客の受け入れ体制の準備で忙しくなってきました。

7月24日には、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の第37回勉強会が衆議院第一議員会館で開催されたので、私も出席してきましたが、今回のテーマは「医療機関における外国人患者の受け入れの課題と対策」というものでした。

講師は、厚生労働省医政局総務課医療国際展開推進室長の喜多洋輔氏でした。

観光客のみならず、在留外国人・訪日外国人の数は急速に増えており、喜多氏が示した資料では、2018年には訪日外国人が3000万人を超えて3119万人、在留外国人が273万人になっていました。

また予想では、2020年には訪日外国人旅行者4000万人となっていました(明日の日本を支える観光ビジョン)。

人口減少に悩むわが国としては、インバウンドの増加は歓迎すべきことと考えられますが、医療者および厚生労働省の立場からは、単純に喜んでばかりはいられません。

日本へ来る外国人が増えれば、患者さんの発生数も増えますから、いかに外国人患者さんに対応するかが大きな課題となります。

外国人を受け入れるにあたっては、まず言葉の問題があります。外国語に対応できる医療機関がどのくらいあるのかも問題ですし、それに対応するスタッフの準備が可能かどうかも、まだまだ問題です。外国人に対応する体制を整えた医療機関には何か、加算(インセンティブ)がとれるようにできるのかどうかの検討もする必要があります。

訪日外国人旅行者に対する診療価格の問題も大きいです。

日本人は全て保険診療で医療を受けているので、医療価格は公定価格ですが、外国人には日本で雇用されている人は別として、保険で決まった価格を請求するわけにはいきません。自由診療として流動的に請求してよいわけですが、多くの医療機関では、診療保険点数表を活用して、1点=○○円として換算しています。現状は90%の病院で、1点当たり10円で計算しています。外国人から見れば、とてもお安い値段です。

外国人患者に対応した場合は、通訳を必要とすることがありますが、通訳料を請求している病院の割合は約10%のみと喜多氏は報告していました。日本の医療機関は本当に良心的、かつ自己犠牲の精神に富んでいることがうかがわれます。

外国人患者の診療に関しては、未収金問題も大きな課題です。喜多氏の報告では、8.9%の病院が未収金を経験していました。

外国人の診療に関しては、さまざまな課題、問題がありますが、政府としては、関係省庁が連携して、「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループを設置する」と説明がありました(3月22日付)。

日本が諸外国から好印象をもって迎えられるように、政府のみならず、全国民が一丸となって対策を練る必要があると痛感いたしました。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院名誉院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

7月29日20時05分 552
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