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全国高校野球選手権岩手大会の決勝で、超高校級として注目される3年生の佐々木朗希投手を起用せずに、大船渡高校が敗れた件で、日本中にかなりの議論が巻き起こっています。

少年時代は野球少年で、好きな野球をやって一生過ごせたら幸せ、と信じていた私にとっては、無関心ではいられない問題です。さらに、自分は昔の田舎の公立小学校、中学校での話ではありますが、野球がうまいと高い評判を得て中学校へ進み、当然のように野球部に入り、期待に応えようと夏になると毎日、バッティング投手を買って出て、先輩たちを打ち取って自慢しているうちに、激しい肘痛に襲われました。顔を洗う動作さえできなくなり、全く投球ができなくなった経験があるため、野球選手の肩痛、肘痛の問題を目にすると、「良い指導者がいて、非合理的な、無理な練習をさせないでほしい」といつも思うのです。

学生時代には1年生の時には捕手として強肩を見せつけることができていたのに、春休みに、盗塁する選手を刺す練習をし過ぎて、一瞬にして肩を壊して、それ以来、盗塁を阻止できなくなってしまった苦い経験があります。

今回は、佐々木投手を出場させなかった監督の判断を、英断として褒める意見と、それを批判する意見に分かれています。

球界のご意見番という異名を持つ張本勲さんは、監督の判断を強く批判していますが、これを現役大リーガーのダルビッシュ投手が批判したという記事がマスコミにも載り、話題になっています。

私の意見は、大船渡高校の監督とダルビッシュ投手の意見を支持するものです。

野球をやっている選手の肩や肘は、一瞬の無理で簡単に壊れ、一生治癒しないものも珍しくないものであると私は考えています。

そのため、現在のスポーツ指導者は、昔の根性ものシリーズの続きで若者を指導してはいけないと思っています。

その点、ダルビッシュ投手は日本のみならず米国での指導・教育を受けていることもあるのでしょうが、投手の肩、肘を守る重要性、その方法をよく体得している人だと思います。張本氏は偉大な野球人で、あまりにも偉大であるがゆえに、簡単に批判しにくいのですが、もう少し、現在のスポーツ医学に基づいた発言をしていただきたいと思います。

高校生に限らず、野球選手の投球数、投球回数の制限は当然のものと考えないといけません。

私がいつも思い出すのは、かつて浪商高校で大活躍し、高校2年生からプロ野球へ進み、大活躍したものの短命で終わってしまった尾崎行雄さんのことです。

今思うのは、尾崎さんをもっと大切に育てて使えば、彼は金田正一さんを凌(しの)ぐような記録を残せたのではなかったのかということです。同じく高校野球の英雄であった板東英二さん、太田幸司さんについても同じ感想を持っています。

昔の根性物語に憧れて無理をして、または無理をさせて、アスリート人生を狂わせられた若者が数え切れないほど大勢いたのではないかと悔やまれます。

大船渡の国保陽平監督は自らの決断について、「故障の予防。3年間で一番壊れる可能性が高いと思った」と説明したと伝えられています。責任感の強い、選手の一生を考え抜いてくれる、立派な方だと思います。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院名誉院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

8月5日20時00分 436
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