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今年のノーベル医学生理学賞が、京都大の本庶佑(ほんじょ・たすく)博士と米国のジェームズ・アリソン博士に贈られることが決まりました。本庶氏は新しいタイプの抗がん剤「オプジーボ」の開発につながる基礎研究が評価されたものです。

高額で話題になった抗がん剤オプジーボの開発者というと、はじめからよく効く抗がん剤を狙って研究を続けてきたのではないかと思われがちですが、実際は全くそうではなかったようです。この成果が最初から抗がん剤を開発しようと考えた結果ではないことに注目すべきだと思われます。生命の基本的な働きを解明しようとする四半世紀前の基礎研究が、結果的に抗がん剤につながったということですから、基礎研究者たちにとっても、今後の仕事への励みになる出来事でもあります。

最近の日本の科学界は論文数も低迷し、暗雲が漂っているように見えると指摘され、その背景にあるのは、目先の成果を重視する政府の基盤的な研究費の軽視、行き過ぎた研究投資の「集中と選択」ではないだろうかと指摘する新聞もあります。こんな時代背景の中での本庶博士のノーベル賞受賞です。日本国民はあらためて基礎的な研究の重要性を認識し、その研究費を惜しむべきではないと思いますが、現在の日本の経済状況、政府の方針などを観ると、現在の進行方向の矯正は容易ではないように感じ、不安に思っています。

本庶博士は記者会見の中で、6つの「C」が時代を変える研究には必要だと、説いています。Cは英語表記で好奇心(Curiosity)、勇気(Courage)、挑戦(Challenging)、確信(Conviction)、集中(Concentration)、継続(Continuation)の頭文字。これらのCを本庶博士は学生時代から追い求めてきたといいます。

この記事を読んで、私は、これからの老人もこの6つのCを常に意識して、何事にも興味を持って、新しいことに挑戦しながら生きていかなくてはならない、と強く認識いたしました。私の臨床外科医としての研究の主眼が、新しい手術手技の開発とその教育法であったため、本庶博士と私の人生はまったく異なったものになりましたが、自分にあと40年生きる時間が与えられるものなら、基礎医学的研究の道も極めてみたいと思います。何事にもcuriousであり続けたいです。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

10月7日20時00分 174
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