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佐渡島のトキの保護についてこの欄でも取り上げたことがありましたが、野生動物、自然動物の数のコントロールは本当に難しいものだと思います。簡単に捕獲できて、数もたくさんいると思っていると乱獲になり、気付いたら「絶滅種」に分類されるほど、激減してしまったという失敗を人類は繰り返してきたようです。

今年の元日の読売新聞は、「『絶滅種』のはずが増えすぎて…逆に捕獲対象に」と題する記事を掲載していました。人間の身勝手さを非難された思いがして、ドキッとしたのは私だけではないと思います。

同紙の記事によりますと、山形県内でニホンジカの目撃件数とニホンイノシシの捕獲頭数が急増しているため、以前、絶滅したとされていたが、絶滅のおそれがある野生生物を分類した「県レッドリスト」を今年改訂し、「絶滅種」から除外するというのですから、その増加のスピードに驚きました。生息数や生息地域が広がることで、生態系への悪影響、農林業や人への被害が広がると懸念されていると言いますから、自然動物の適切な数のコントロールがいかに難しいかを思い知りました。

県みどり自然課によると、ニホンジカは、県内で大正期に捕獲されたという記録を最後に絶滅したと考えられてきましたが、2009年に車にはねられたとみられる死骸が見つかり、存在が確認され、その後は増加傾向にあるそうで、県外から移動してきたと推測されています。15年に目撃件数が30件を超え、17年は41件、今年は11月末時点で既に66件となり、09年以降で最多となったとのことです。絶滅種の生存数が急激に増えて来たと聞いて、喜びたい気分になりましたが、そうはいかないようです。ニホンジカの数が増えすぎて、農林業への被害が増えていることが問題として浮上してきたのです。

ニホンジカ以上に被害がより深刻なのがイノシシだといいます。イノシシも明治末期に県内では絶滅したと推定されていましたが、02年に捕獲され、その後、増え続けているのです。捕獲頭数は15年度の230頭に対し、昨年度は888頭と約3・9倍になり、今年度は11月末時点で388頭ですが、イノシシの狩猟期間は3月末までと長く、これから捕獲数が多くなるといいます。

国は、生態系や農林業などに深刻な被害を及ぼしているニホンジカとイノシシを23年度までに半減させる目標を掲げ、「指定管理鳥獣」として、交付金を出して都道府県が行う捕獲を支援しているといいます。

同じ種類の動物を、絶滅種に指定したり、指定管理鳥獣に指定したりと、忙しいことですが、われわれ人間の無策ぶりを笑われているようで、忸怩(じくじ)たる思いになります。

日本イノシシもニホンジカも、こんなに簡単に増えるものなら、畜産業の対象にできないものかと、食いしん坊としては考えてしまいます。40年ほど前に岐阜県の郡上中央病院(現・郡上市民病院)に勤務していたころ、シシ肉も鹿肉もよく食べたものでした。とてもおいしかったです。熊肉の脂も絶品です。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

1月14日20時00分 516
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