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小説『烽火の海 ツチンボ捕りの幕末』

幕末の房州勝山を舞台に

房総捕鯨の祖、醍醐新兵衛定緝(1827―62)を主人公にした歴史小説『烽火(のろし)の海 ツチンボ捕りの幕末』が千葉日報社から出版された。著者は一級小型船舶操縦免許を持つ作家、高遠實さん(72)=市川市在住=。ものづくりと研究の現場に身を置き、航海や歴史をテーマに執筆活動を続けている。幕末の房州勝山を舞台にした書き下ろしで、捕鯨と新兵衛の史実を基にした歴史小説として、房州住人にも衝撃の大きな一冊だ。税別1500円。

これまで、醍醐家と新兵衛を研究した歴史書はいくつもあったが、新兵衛を主人公にした小説は少なかった。

高遠さんは海に関する研究を続ける中で、醍醐新兵衛に興味を持ち、400字詰め原稿用紙500枚ほどの学術書を書いた。結局、この学術書には満足できず、いったんこれを破棄し、幕末の時代背景と絡めたフィクションにすることに。当時の一大産業である房州捕鯨と黒船来航などを絡めて、時代ドラマに仕上げた。

「いさな大名」「瀬鳴り」「北辺挽歌」「見果てぬ夢」の4章建て。勝山での捕鯨の様子を経糸に、嘉永年間に列島沿岸に出没する異国捕鯨船とのやり取りを緯糸に編んだ。

新兵衛が捕鯨の総元締めとして大名並みの扱いを受けていたこと、東京湾内に黒船が入港した際も、地元捕鯨を守るために果敢に立ち向かったことなどが、緻密な筆致で描かれる。

新兵衛は捕鯨だけでなく、鯨から得られる油でろうそくをつくるなど、国家規模の産業を目指した。醍醐家は蝦夷地への出航で経済的に疲弊し、明治維新の動乱で大きな打撃を受ける。

小説の最後で新兵衛は、海の男らしい劇的な姿をさらす。

高遠さんは瀬戸内海や日本海で育ち、大人になってからは東京湾をホームとし、太平洋や地中海、北海などを航海する。こうした生活の中で新兵衛に魅了され、執筆活動に。資料は当時、鋸南町商工会に勤務していた早川博敏さんに相談。快く資料の提供を受け、小説として脱稿した。タイトルの「ツチンボ」はツチクジラのこと。

本は鋸南町の道の駅案内所(吉浜)、まちかど博物館、「マツオカ」、館山市の宮沢書店で扱っている。

【写真説明】小説『烽火の海 ツチンボ捕りの幕末』

12月12日20時00分 674
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