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『風の果て』を手にする石川さん=房日新聞社で

地域活性化の一石にと

固有名詞盛ったフィクション

移住した鋸南町で、少子化、高齢化が進む現状を目の当たりにした男性が、老夫婦の介護問題、数少ない若者の成長の物語を小説化し、『風の果て』(東銀座出版社)のタイトルで出版した。東京都内では造園業と生花店を営んだが、鋸南では比較的自由な生活を謳歌(おうか)していた。この地域の抱える問題を斟酌(しんしゃく)した際、問題提起は小説しかないと考え、執筆に至った。「高齢化、過疎化、高齢者の運転など問題を散りばめた」と著者。本体1528円で販売している。(忍足利彦)

同町元名の石川武雄さん(74)。32歳で脱サラし造園業になったが、2002年に鋸南町に夫婦で移住した。

暮らし始めたころは、当地の課題をあまり意識しなかった。鋸南で暮らすうち、南房総広域での高齢化の進展、子どもの少なさ、高校卒業とともに地元を出て行く若者の多さなどが浮き彫りになり、ここを舞台に小説を書けば、地域活性化の小さな一石になるのではないかと考え、筆を執った。

昨年正月、孫が遊びに来たのがヒントとなり、構想を練った。1年間ほどかけて、吟味、推敲(すいこう)の末、脱稿した。

小説は鋸南町が舞台。主人公は大学生の「涌井洋平」。東京から祖父・洋三の住む鋸南町に遊びに来て、和菓子屋のバイトの青山里江と出会う。石川さん自身の孫とダブっての人物設定だ。

若い2人と祖父母の日常が続くが、祖母・房枝が脳梗塞で倒れ、やがて血管性認知症が発覚する。ここから物語が暗転していく。房枝の認知症は急激に悪化し、愛妻の症状に悩みに悩んだ洋三は、妻の「お願いします。やってください」の声を受けて、ある行動に出る。家族への手紙を残し、洋三は自ら命を断とうとするが、たまたま訪ねて来た里江に発見される。

物語はここがピーク。その後の裁判の様子、立ち直りの過程、洋平と里江の恋の物語が、意外な展開で続く。

3章建て198ページの物語は、さまざまな問題を提起して閉じる。房州に住む全員が、胸に手を当てて考える場となる一冊だ。

記者は、数年前から石川さんを知っている。豪放磊落(らいらく)な性格で、小説を書くようには見えなかったが、それほど問題意識が高かったということだろう。病状や裁判の場面は関連資料を読み込み、高いリアリティーを持たせたという。表紙は安房美術会員である自身が、鋸南の風景をイメージに描いた。

700部を製作。税込み1650円で手売りしている。希望者は振込用紙を同封したレターパックで郵送される。購入は電話で申し込む。

「地名など、わざと固有名詞を盛り込んだが、小説はあくまでフィクション。いろいろなことを想像して読んでほしい」と石川さん。

問い合わせは石川さん(鋸南町元名765―1、電話0470―55―2329、ファクス兼用)へ。

【写真説明】『風の果て』を手にする石川さん=房日新聞社で

18年12月24日 698
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