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「ナラ枯れ」と見られる被害=南房総市富浦町南無谷で

房州全域 一昨年から被害報告

有効手段見いだせず

房州を代表する樹木、マテバシイ(房州名・トージ)。どの山にも普通に生えているなじみのある木だが、この木が今、立ち枯れの危機を迎えている。カシノナガキクイムシが病原菌を伝播(でんぱ)することで起こる樹木の伝染病「ナラ枯れ」と呼ばれる現象。日本海沿岸で発生しているナラ枯れだが、ここ数年、房州でも被害の木が目立つ。今のところ、対策はないとされ、昭和30年代に大流行したマツクイムシによる立ち枯れに匹敵する可能性もある。(忍足利彦)

安房・夷隅地域を管轄する、県南部林業事務所によると、被害の報告が入りだしたのは、一昨年から。君津地区との境や内房沿岸に被害が多く、今年に入ってからは急に被害が増え出した。

主にマテバシイが被害に遭っているといい、立ち入りが可能な場所は職員が出て、状況を確認し、カシノナガキクイムシによる穿孔も確認している。被害が広範囲にわたり、急斜面の木も被害に遭っていることから、面積や本数などは把握できず、管内全域の被害状況の取りまとめは難しいという。

研究機関などによると、国内では昭和50年代からコナラ、ミズナラなどの集団枯死が目立ちだし、被害域が拡大している。ナラ枯れと呼ばれているが、シイ、カシ類も被害に遭う。

近年の研究では、病原菌をカシノナガキクイムシが運ぶことによって、広く伝染していることが分かった。被害は梅雨明け後、7月から8月にかけて発生することが多いという。

被害は日本海沿岸地域に多いが、最近は太平洋側の樹木も枯れている。

薬剤によるカシノナガキクイムシの捕殺が難しい状況で、森林管理を厳格にするしか方法がないが、房州のマテバシイはほぼ放任状態のため、管理そのものが難しいという。

県南部林業事務所でも、有効手段を見いだせず、様子見の状態だ。全国規模の問題とあって、対策を立てられないのが実情のようだ。

▽低名山で異変 対策待ちたい

記者が、房州低名山で異変を感じたのは、4年ほど前。海沿いのトージの純林に、茶色く枯れた木が複数あった。知己のベテラン樹木医に相談したら、大風による立ち枯れではないかという見解で、実際に山に登って樹木の状況を確認しないと、何とも言えないという話だった。

記者も樹木医も多忙のため、山に登って確認する機会もなかった。2年ほど前に、樹木医からナラ枯れ病の資料をもらった際には、愕然(がくぜん)とした。「被害を受ける樹種」にコナラ亜属、アカガシ亜属、クリ属、シイ属に並んで、マテバシイ属が書かれていたからである。

房州低名山を歩くと、トージはあちこちに普通に生えている。かつては薪炭(しんたん)の材料として増やされ、果樹園の風よけとしても盛んに植えられた。薪炭の需要はなくなったとはいえ、風よけは健在だ。

5月には黄色い花を咲かせ、一年中、緑の葉を茂らせる。こうしたトージが次々立ち枯れたら、この地域の植生は一体、どうなるのだろう。

昭和30年代に吹き荒れたマツクイムシの被害(マツ材線虫病)では、海岸沿いのマツが次々枯れた。同じようにマテバシイが枯れるとなると、房州ではマツ以上の惨事だろう。

地域を愛する者として、マテバシイの立ち枯れは何としても防がなくてはならないと思うが、有効な手立てはないという。関係者が知恵を絞り、広範囲での対策を待ちたい。

【写真説明】「ナラ枯れ」と見られる被害=南房総市富浦町南無谷で

8月16日20時00分 1,646
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