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白石町長を訪問した加藤さん(中央)と山野井さん(左)=鋸南

54ページに思いの丈

「ブドウの父」として、学校教育でブドウ栽培に取り組んだ元県農業改良普及員の加藤武司さん(89)=鋸南町下佐久間=が、普及員としての自身の活動をまとめた本『ぶどうのある学校』を自費出版した。実践教育の場となった勝山小学校は統合ですでになく、ブドウの木も新校舎建設で伐採された。思いの丈を54ページにぎっしり詰め込んだ。

加藤さんは、昭和5年生まれ。安房農業高校(当時)、県立農業大学校を卒業後、県農業改良普及所に採用となる。安房各地の普及所に勤務後、静岡大学農学部に長期学び、多彩な農業知識を深める。昭和60年には、県君津支庁君津改良普及所長となる。

勝山小と関わるのは、昭和47年から。学校から新校舎が落成したのを記念して、安らぎの場づくりの一環として、校庭にふさわしい樹木を植え、緑のあふれる教育環境の育成に着手することが打ち出された。

PTA役員から推進委員会への出席の依頼があった。この委員会でブドウを植えることが提案される。改良普及員としての加藤さんの果樹栽培の技術が買われたからだ。

加藤さんは「ブドウは、植栽して短期間に収穫の喜びを味わうことができる。とりわけ夏の期間は、直射日光を遮るブラインドの役割を果たす。日の短くなる秋から冬にかけては落葉するので、教室の明るさを保つ」などと、ブドウ栽培の利点を挙げた。

加藤さんの『ぶどうのある学校』

石井哲爾教頭(当時)は賛成したが、校長が「(ブドウ栽培は)毎年、高度な技術を要するし、剪定(せんてい)をしなければならない」として、反対を打ち出した。

紆余(うよ)曲折あったものの、デラウェアの導入が決まり、PTAの奉仕作業による棚づくりが始まり、3年目にはどの木にも房がなり始めた。

こうした地域を挙げての活動が実を結び、勝山小は「ブドウのある学校」として定着。加藤さんはいつしか、「ブドウの父」と呼ばれるように。

本は加藤さんが「90歳になるのを前に、これまでの活動をまとめたい」と思い、旧知の元教員、山野井孝子さんに相談。関係者が動いて、一冊にまとめ上げた。

加藤さん自身の筆による活動内容の他、山野井さん、白石治和町長、当時の教諭の寺澤精一さん、元同僚の三浦篤さん、齋藤陽子さんらも寄稿文を書いている。

表紙の絵は、山野井さんが描いたブドウの絵を使った。巻末には当時の房日新聞の記事3本も掲載している。

本の完成後、加藤さんは山野井さんとともに、町役場に白石町長を訪問。学校や教育委員会に本を贈呈した。懇談の中で加藤さんは「ブドウ栽培を推し進めてくれた当時の教頭の石井哲爾さんが5日に亡くなってしまい、本を読んでもらえず残念だった」と、ブドウ教育の歴史を胸にしみじみ。

白石町長は「いい本ができた。勝山小もブドウも今はないが、加藤さんの思いは子どもにも広く伝わると思う」と謝意を述べた。

【写真説明】白石町長を訪問した加藤さん(中央)と山野井さん(左)=鋸南

【写真説明】加藤さんの『ぶどうのある学校』

7月20日20時00分 497

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