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シーボルト事件と関わり深い絵馬を復元 南房総

2021年09月14日 03時00分
南房総市和田町柴の西福院(仁科正洋住職)が所蔵する「長崎湊絵馬」の復元図が完成し8日、同寺に届けられた。文政11年(1828)のシーボルト事件と関わりがあると伝わる絵馬で、先祖の供養を兼ねて同地区の野山一巳さん(72)が東京芸術大学に依頼。約200年の時を経て、作品が色鮮やかによみがえった。

幕府の書物奉行、高橋景保が、オランダ商館医員のシーボルトに日本地図を与えた疑いで逮捕され、高橋は獄中で病死し、シーボルトが国外追放となった事件。

『和田町史』には、シーボルトに審問をした長崎奉行本多正収が、和田地区を知行していたことから、柴に住む「与七」が付き人として長崎に渡り、当時門外不出だった絵馬を持ち帰ったとある。誰かの指示と考えられるが、詳細は不明。その後、与七は事件の関係者として取り調べを受け、文政13年、江戸で処刑された。絵馬は同年、西福院に奉納され、お堂で保管されてきた。

町史で、与七は、野山さんの父・由太郎さんの数代前の人と記され、実家と住所が重なることから、野山さんは与七を先祖と考え、老朽化の著しかった絵馬の復元を東京芸術大学に依頼。文化財としての価値や目的から同大が賛同し、平成30年から保存修復研究の一環として復元に取り組むことになった。

絵馬の大きさは、縦64・4センチ、横138・9センチ。主に担当した同大大学院美術研究科の非常勤講師、向井大祐さん(33)によると、「図像の多くが消失しており、線の再現は困難を極めた」という。痕跡をもとに、同年代の類例作品と照らし、緻密に線が補われた。色も科学調査で画材を判定し、現代入手できる最も近い素材を使った。約2年かけて和紙に絵が復元された。

この日は、野山さんと同寺の長老、小美山栄繁さん(72)らの立ち会いのもと、同大スタッフ4人が絵を設置。同日、原本の絵馬は殺虫処置され、今後復元された絵図と並べて収蔵ケースに収められるという。

野山さんは、「事件の真相は分からないが、先祖供養ができて、胸の晴れる思い。今後、作品がこの土地に引き継がれていくことを願います」と話していた。

【写真説明】復元された絵と絵馬の前で野山さん(右)と向井さん=南房総

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